千鳥ヶ淵戦没者墓苑

藤原淑子著

メイクテイラー会戦で奇跡的に生き残った著者の父、今里淑郎氏は、戦後「生かされた命は戦友を弔い戦没者慰霊をするための命だ」と言い続け、ミャンマーの上座僧の資格を取得し戦没者慰霊に生涯を捧げました。

本書は、25年前から父の活動を手伝い、父亡き後は父の遺志を継いだ著者が、インパール作戦、イラワジ・メイクテイラー会戦の現地に赴き、現地の地形を見て、地形から見たビルマ戦争の無謀さ、そして多くの命の犠牲を生んだ事実を、多くのご遺族や戦争を知らない方々に紹介するものです。

ミャンマーの北西部のチンドウィン川流域の村は、少数民族地域で情勢不安の為、現地に入るには多くの困難が伴い外国人の入域は永年許されず、またミャンマーから陸路でインド/インパールへの外国人の国境越えも同様でしたが、共に解除がされた翌年の19年秋に著者は現地に入りました。著者は日本軍の戦跡をたどりながらチンドウィン川を下り、アラカン山脈を縦断し、インパール・メイクテイラーへと慰霊の旅を続けます。主要な地形写真は勿論、日本軍各部隊の慰霊碑や市街の様子など貴重な現地写真をふんだんに使い、更に、戦史の概要をまとめ、初めての方にもインパール作戦、イラワジ・メイクテイラー会戦を約60ページにわたり解りやすく解説しています。

当奉仕会では、本書が現地で撮った地形写真により、作戦の困難さを容易に実感できるものであり、その資料的価値は極めて大きいと認め、皆様に是非一読をお薦めするものです。

机上で多数の戦史を拝読しても解り得なかったビルマ戦争が、困難な地形を見て、現地に立ち、チンドウィン川を渡り、アラカン山脈を越えた事で改めてその無謀さを痛感した私にとり、衝撃のビルマ戦争となりました。（本書まえがきより）

大東亜戦争から７７年が経過し、戦争体験者が少なくなってきました。慰霊奉賛を目的として奉仕会も活動しておりますが、戦争のことを子の代、孫の代へ語り継ぐことにひと苦労しているのが現状ではないでしょうか？そんなとき、今年の８月に発刊された絵本３部作

①「おじいちゃんのバイオリン」、②「さいごのあさごはん」、③「この声がきこえますか？」（みえだみなこ著）に縁あって出会い、奉仕会として「千鳥ヶ淵」読者に推薦する次第です。

①おじいちゃんのバイオリン この本の原作は「シベリアのバイオリン」（窪田由佳子著・地湧社）で、２０２０年にクラウドファンディングで出版されました。シベリア抑留の暗い話は良く聞いていましたが、この絵本は原作どおりハッピーエンドです。どんな状況であっても「好きなことが魂を鼓舞し、さらなる奇跡を生んだ」そんなエピソードが絵本になっています。 お子様、お孫様と、先の大戦で実際にあったシベリア抑留についてのことを考えるきっかけになると思います。

②さいごのあさごはん 原作は「炎のメモワール」（小野瑛子著）で、小野氏からの「絵本にしてほしい」というリクエストに応じて絵本作家・みえだ氏が、小野氏没後約束を果たして絵本にしたものです。「戦争・原爆」がテーマになっていますが、「原爆」の絵本ではありません。「戦禍」により生き残った家族の悲しみ（「サバイバーズギルド」（生存者罪悪））を静かに伝える内容となっています。戦争はダメだと私たちは簡単に口にしますが、それは日ごろから心がけなければ「平和」な状態を保つことは難しいのだと思います。何が平和か。平和の尊さをどこに見出すのか？そんなことをふと、考えるきっかけになれば嬉しいです。読んだ後、涙が溢れてきます。

③ この声がきこえますか？ 77年前に亡くなられたすべての方々の声を無にしないでほしいと思って、絵本作家・みえだ氏の幼少の頃のエピソードを交えて、本当に幸せだった昭和50年代を思い出しながら、一気に三日間で制作したと聞いています。既に毎日新聞（9月29日）などでも紹介されていますのでご存じの方もあると思います。